ポーカー(テキサスホールデム)の理論を理解する
近々テキサスホールデムをプレイする機会があるため、その理論を学びました。内容を簡単にまとめます。
ベットサイズと期待値・勝率の関係から考える良いベットサイズ
ポーカーにおけるベットサイズの選択は、期待値(EV)と勝率(p)の関係に基づいて戦略的に行われます。適切なベットサイズを選ぶことで、長期的に利益を最大化することが可能です。
期待値(EV)を考える
期待値は、特定のアクションを取った際に長期的に得られる平均的な利益を示します。ポーカーでは、ベットやコール、フォールドの各選択肢に対して期待値を計算し、最も高いEVを持つ行動を選ぶことが理想的です。
ここで、
- p = 自分の手が勝つ確率
- s = 現在のポットサイズ
- b = 自分がベットする額
です。
ポットオッズと期待値の関係
ポットオッズは、現在のポットの大きさと、次に必要なベット額との比率です。これを基に、特定の手を完成させるために必要な確率と比較します。
期待値が正となる条件は以下の通りです。
しかし、実践では計算を簡略化するために、以下のようにポットオッズを使用することが多いです。
ベットサイズの決定
ベットサイズは、以下の要素を考慮して決定します。
- 手の強さ:
- 強い手(例:トップペア、フラッシュ)は大きめにベットし、ポットを増やします。
- 弱い手やブラフの場合は、相手をフォールドさせるために適度なベットを行います。
- 相手のレンジ:
- 相手がどの程度の手を持っているかを推測し、それに応じたベットサイズを設定します。
- ポジション:
- 後ろのポジションでは情報が多いため、ベットサイズを調整しやすいです。
- 前のポジションでは慎重にベットサイズを設定します。
- ポットサイズとのバランス:
- ポットに対するベットの割合を考慮し、適切な大きさを選びます。一般的にはポットの50~70%程度が目安です。
期待値最大化のためのベットサイズ
期待値を最大化するためには、ベットサイズ b とポットサイズ s の比率 に注目します。ベットサイズと期待値の関係を視覚的に確認します。

▶図表の説明:ベットサイズ比率と期待値 の関係を示すグラフ。
- 緑色の領域:EVが正(ベットが有利)
- 赤色の領域:EVが負(ベットが不利)
- 青色の線:EVの変化
- 横軸:ベットサイズ比率
- 縦軸:期待値
自身の勝率と理想的なベットサイズ
- p> 0.5 の場合:
- ベットサイズを大きくするほどEVが増加します。
- 最適なベットサイズはポットの200%(オールイン)で最大EVを得られます。
- p < 0.5 の場合:
- ベットサイズを小さくするほどEVが増加します。
- 最適な戦略はフォールド(ベットサイズ比率0)です。
- p = 0.5 の場合:
- EVはベットサイズに依存せず一定です。
期待値の正確な判断式とポットオッズによる判断式の乖離
ポーカーにおいて、ベットの判断を下す際に使用される「期待値」と「ポットオッズ」の関係には、重要な違いがあります。ここでは、期待値が正となる正確な条件と、実務でよく用いられるポットオッズの近似との乖離について詳しく解説します。
期待値が正となる条件
期待値(EV)が正となるための条件は以下の通りです。
この条件を整理すると、
となります。これは、自分の手が勝つ確率pが右辺の式の値を上回る場合、ベットを行うことでプラスの期待値を得られることを示しています。
ポットオッズによる判断式
ポットオッズは、次に必要なベット額と現在のポットサイズとの比率を基にした簡略化された判断基準です。
実務では、以下のように判断されることが多いです。
- 条件:
- 解釈:自分の手が勝つ確率がポットオッズを上回る場合、ベットまたはコールする。
判断式の乖離
正確な期待値の条件とポットオッズによる判断式には以下のような違いがあります。
この差異は、特にベット額 b がポットサイズ s に対して大きい場合に顕著になります。具体的には、ベット額がポットサイズに近い、またはそれを超える場合、ポットオッズによる判断が不正確となり、期待値の条件と乖離が生じます。
視覚的理解
ベットサイズ b とポットサイズ s の比率 に対する期待値の変化を視覚化します。

▶図表の説明
- 横軸:ベットサイズ比率
- 縦軸:値(期待値の閾値とポットオッズ)
- 青線:期待値 の変化
- 緑破線:期待値が正となる閾値
- オレンジ点線:ポットオッズ
- 灰色の領域:ポットオッズと期待値閾値の差異
実務的な判断式の有効性と近似の限界
シミュレーション結果から、ベットサイズ比率 が小さい場合(ベット額がポットサイズに対して非常に小さい場合)、ポットオッズによる近似が非常に有効であることが確認できます。しかし、ベットサイズがポットサイズに近づくにつれて、ポットオッズと期待値閾値の差異が大きくなり、ポットオッズの近似が不正確になることが分かります。
まとめ:初心者が心得ておくべきポーカーの基本技術3つ
さて、以上を踏まえ、テキサスホールデムを始めたばかりの初心者が押さえておくべき基本技術は以下の3つです。
1. スターティングハンドの選択
今回、自明すぎるがゆえに詳しく説明しませんでしたが、これが全てと言えるでしょう。
ポーカーにおいて、どのハンドをプレイし、どのハンドをフォールドするかの選択は極めて重要です。強いスターティングハンドを選ぶことで、勝率を大幅に高めることが可能です。以下のポイントを押さえましょう。
- 高いペア(A-A、K-K、Q-Q)
- スーテッドコネクター(同じスートで連続した数字、例:J-10 同スート)
- 高いスーテッドカード(例:A-K 同スート)
2. ポジションの活用
こちらも今回あえて取り上げて説明はしませんでしたが、ポジションはポーカーにおける重要な戦略要素です。
後ろのポジション(ディーラーボタンに近い位置)では、他のプレイヤーの動きを見てから行動できるため、有利な情報を基に戦略を立てやすくなります。以下のポイントを意識しましょう。
- 後ろのポジション:積極的なプレイが可能。
- 前のポジション:慎重なプレイが求められる。
3. ベットサイズの理解と調整
こちらが今回説明した内容です。ここまで解説しておいてそれはないと思われるかもしれませんが、このような理論的な内容を理解していることよりも、1, 2のような基本的な自身の状況をもとに、勝負に挑む・降りるという判断を適切にできることの方がよほど重要です。
さて、ベットサイズの選択は、期待値(EV)と勝率(p)の関係に基づいて行います。適切なベットサイズを選ぶことで、長期的な利益を最大化することが可能です。以下のポイントを押さえましょう。
- 期待値の正確な理解:自分の手が勝つ確率p とポットサイズs 、ベットサイズb の関係を理解する。
- ポットオッズの活用:簡略化された判断基準としてポットオッズを用いる。しかし、正確な条件を意識して、乖離が発生する場面(=s/bが大きいとき)を適切に理解する。
- 判断のための正確な式:
- ベットサイズの調整:手の強さ、相手のレンジ、ポジション、ポットサイズに応じてベットサイズを柔軟に調整する。
- 具体的には、手が強いときはポットサイズに対して2倍をベットしてもOK。ただし、長期的な安定的勝利を得るために、定石としてはリバーにおいてポットサイズの70-100%をベットすることとされている